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2019年5月19日

【EV】東京都「H29~30年度・島しょ地域におけるEV普及事業」報告書を読んでみた!

電気自動車(EV)は島しょ部や中山間地など、給油所数が減少している地域や燃料価格が高い地域において、ガソリン車に代わる自動車と期待されました。

三菱アイミーブや初代リーフが発売された2010年前後には、全国の離島を中心にEV導入に向けた取り組みが行われ、そのうち幾つかのプロジェクトは、現在も行われています。


GoGoEVでも以前、それらプロジェクトのその後について調査し、コラムにしました。


◯GoGoEV関連コラム:

-【EV】離島地域のEV&充電スタンド事情(第一回; 沖縄本島)(2016年8月29日付)

-【EV】離島地域のEV&充電スタンド事情(第二回; 五島列島)(2016年9月2日付)

-【EV】離島地域のEV&充電スタンド事情(第三回; 沖縄県宮古島)(2016年9月26日付)

-【EV】離島地域のEV&充電スタンド事情(第四回; 小豆島)(2016年9月30日付)

-【EV】離島地域のEV&充電スタンド事情(最終回; 屋久島)(2016年11月4日付)

-【EV】離島地域のEV&充電スタンド事情(番外編; 姫島村)(2017年5月29日付)


これら動きとは異なるプロジェクトが平成29(2017)年より2年間、八丈島を舞台に行われました。東京都が計10台のEVを用い、どのような業種が、どのようなEVを導入をすることが、利便性を確保しつつ経済性を伴うのか、実証実験を行いました。


この取り組みの成果報告書が今年1月に公開されましたが、内容が素晴らしく、他の島しょ部や中山間地にも参考になると思いましたので、本日のGoGoEVコラムでご紹介したいと思います。


1. 実証事業の概要

実証事業は、東京都が「島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託」として、株式会社JTBコーポレートセールス(2018年4月1日より株式会社JTB)が、八丈島で実施しました。


2017年は日産e-NV200を3台、八丈島の宿泊施設が、自家用およびカーシェアリング用としておよそ半年間使いました。2018年には三菱ミニキャブMievを6台、新型日産リーフを1台追加し、計10台を3か月間、建設・設備事業者、福祉事業者、レンタカー事業者、ダイビングショップ、店舗・生活サービスに貸与し、様々なデータを取得しました。


同時に、八丈島でEVを導入しタクシー事業を営む「株式会社愛光観光」に協力してもらい、2台の旧型リーフもデータ取得に参加しました。


▲実証事業で用いたEV(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)



▲実証への参加事業者と期間(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)


およそ1年間取得されたデータを、①軽自動車バン、②乗用車セダン、③乗用車セダンの3カテゴリに分類し、初期条件を設定し分析が行われました。なお、電気料金は16.08円/kWh、ガソリンは189円/Lと設定されている点は、本土で評価する場合と異なるので注意が必要です。


▲評価条件(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)


2. 実証事業の結果

実証事業の結果をまとめたものが、下の図になります。各業種別の1日当たりの走行距離と、その業種にあったEVが示され、それに対する経済性が評価されました。その結果、タクシー(乗用車セダン)、ダイビングショップ(軽乗用車バン・乗用車バン)、建設・設備(軽乗用車バン)などは、比較的経済性が高いとされました。


▲実証事業の結果サマリ(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)



▲業種別走行距離(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)


また、同時にモニターとしてEVを利用した事業者に対しアンケートも行われ、興味深い結果が得られています。


例えば、ほとんどの事業者において燃料費の削減効果を実感できていました。


▲モニターアンケート結果例(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)


一方、EVの購入条件としては、EVの新車購入価格がガソリン車と同レベルとなることを上げた声が最も多かったものの、島内での整備ができることや、電池交換費用なども気になっていることは、これまでEVを利用したことがなかったユーザーならではの視点ではないかと思います。


▲モニターアンケート結果例(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)


それに対し、自治体に対しては、新車・中古車を問わず、購入代金の補助を望む声が多く、次いで、充電設備の工事費補助なども期待されているようです。


▲モニターアンケート結果例(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)


アンケート結果で、他に興味深かった結果としては、八丈島の場合、急速充電器の要望はあまり多くないということでした。タクシー会社を除くと、1日あたり100kmを超えるような走行は稀のため、実質的に不要と考えるユーザーが多いことがわかります。この点は、離島などにEVを導入する際に、重要な示唆になると思います。


▲モニターアンケート結果例(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)


3. 業種別EV導入カルテ

今回の実証事業のもう一つの特徴は、取得したデータの使用方法です。事業者別に、EV導入に参考になる「業種別カルテ」というものを作り、公開しています。

例えば、平均走行距離や最長走行距離などのデータが示され、その場合の年間燃料費節約金額や、適応EV、課題などが整理されています。


タクシー事業者の場合、年間80万円以上の燃料費低減が可能となり、補助金をうまく活用すれば1~2年で元が取れることが示されています。


▲業種別カルテ例:タクシー事業者(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)


ダイビングショップの場合は、機材運搬を伴うことがバンタイプが望ましく、軽自動車バンであれば3年、乗用車バンであれば6年で投資が回収できることが示されました。


▲業種別カルテ例:ダイビングショップ(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)


一方で、建設・設備事業者の場合、軽自動車バンであれば補助金を活用すれば7年で元が取れる一方、乗用車バンであれば10年を超えてもガソリン車に対して経済性で上回ることができないことが示されています。


▲業種別カルテ例:建設・設備(出典:平成 30 年度島しょ地域における 電気自動車普及モデル事業に係る業務委託 報告書)


このように、業種の特性や実際の走行条件などに合わせたデータ取得と分析、また、提案が行われていることが、報告書の特徴となっています。


4. 八丈島におけるEV普及策の提案

これら分析の結果、以下6点がEV普及策として具体的に提案されています。

 ①新車EV購入補助の上乗せ

 ②中古EV購入への補助

 ③小型EVなどの紹介や検討

 ④公共用急速充電設備の整備 (不安解消用)

 ⑤EVの整備体制の充実

 ⑥EVを試乗できる環境の整備


東京都は国とは別に、独自のEV普及策を導入し、今年度も実施していますが、離島などについても、独自の普及策を検討するようです。今回の八丈島での実証事業データをうまく活用し、離島部においてもEV普及がますます加速することを期待したいと思います。


●参考ウェブサイト:

-電気自動車実証実験の検証結果について(東京都八丈支庁)

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