【EV・PHEV】電気自動車の暖房技術・寒冷地技術

掲載日:2017年10月17日

今年2月に発売された「新型プリウスPHV」。このプラグインハイブリッド車に、新たな暖房技術が採用されました。デンソーおよび豊田自動織機が開発した、「ガスインジェクション機能付きヒートポンプシステム」です。

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の課題の一つがエンジン排熱による暖房が行えないことで、暖房用エネルギーが別途必要であること、そして、それによりEV・PHEVの航続距離に影響を与えることと言われます。世界的な自動車の電動化の流れに伴い、この問題についても解決に向けた技術開発が進められています。
そこで本日のコラムでは、それら暖房技術ならびに、寒冷地技術について、ご紹介したいと思います。

1. 電気温水ヒーター(PTC)式暖房技術


2009年に三菱自動車より発売されたi-miev、また2010年に日産自動車から発売されたLEAF、いずれも当初、暖房技術として採用されたのは「PTCヒーター」でした。PTCとはPositive Temperature Coefficient(正温度係数)の略で、温度が上がるにつれ、電気抵抗が増加する性質を持つ半導体のことです。

▲エンジン車の暖房とEVの暖房の違い(出典:三菱重工技報)


▲i-miev、アウトランダーPHEV向けPTCヒーターの内部構造(出典:三菱重工技報)

PTCヒーターは電力のエネルギーを直接熱に変えるため、氷点下など、極めて寒い環境でも温めることができます。一方で、電池エネルギーの消費が多いという課題があります。初期型のi-mievやLEAFで、「暖房を使うと、航続距離が著しく落ちた。」などと言われたのは、まさに、PTCヒーターがほぼ唯一の暖房手段であったからです。

一方、航続距離の課題から、PTCヒーターに加え、EV・PHEVにも家庭用エアコンと同じ、ヒートポンプが搭載されるようになっていきます。

2. ヒートポンプ式暖房技術


ヒートポンプとは、電気によって圧縮機(コンプレッサー)を駆動させ、大気中から熱をもらい、暖房を行うものであり、家庭用エアコンと同じ原理です。ただ、外気が極端に低い場合、上手く働かないという弱点がありました。LEAFでは2012年モデル以降、i-mievでは2013年モデル以降、ヒートポンプが搭載されていますが、LEAFの場合、外気温5℃以下ではPTCヒーターが駆動し、その後、ヒートポンプが駆動するという構造となっていました。

▲ヒートポンプの原理(出典:日産自動車ウェブサイト)

以降、アウトランダーPHEVなどでも、PTCヒーターとヒートポンプの両方が搭載されるようになっていきます。なお、初期型LEAFではシートヒーターなども寒冷地仕様オプションでしたが、現在は標準装備となっています。これも、出来るだけ暖房利用を抑え、航続距離を伸ばすための工夫と言えます。

3. 新たな暖房技術


PTCヒーターとヒートポンプの両方を搭載することは、自動車の設計者にとってはスペースを取るため悩ましいところです。できればヒートポンプをより上手く活用できないか。自動車の電動化に伴い、エンジンからの排熱を利用できにくくなっていることを踏まえ、世界の自動車部品メーカーはそれに取り組んでいます。

それに対し、まず答えを出したのがデンソーおよび豊田自動織機の技術陣でした。技術的な特徴は、膨張の際に液化しなかった冷媒、すなわち、蒸発潜熱の解放を行わなかったガスを、もう一度、圧縮機に導入することで、同じ電力でより多くの暖房ができるようにしています。その結果、-10℃での作動が実現し、新型プリウスPHVに採用されました。

▲ガスインジェクションヒートポンプの原理(出典:豊田自動織機ウェブサイト)


▲ガスインジェクションヒートポンプの技術の要であるスクロールコンプレッサ(出典:豊田自動織機ウェブサイト)

他にも、ドイツの自動車部品大手ボッシュにおいても、「インテリジェント・サーマル・マネージメント」と名付け、モーターなどパワートレインの冷却によって得られる熱を用いた暖房なども組み合わせた新たな技術開発を進めているようです。

4. その他寒冷地技術


上記のような、大手自動車会社以外でも、寒冷地に適した技術開発が進められています。中小企業基盤整備機構北海道本部と、北海道室蘭市の西野製作所、札幌市のWill-Eなど中小企業8社は、豊田自動織機コムスを改造し、雪道への対応や雪が付かない構造、また、断熱の強化を行った「ネイクルType-Y」を開発、今後の販売を目指しています。

雪が多くて寒い日のちょっとしたお出かけ、用事にも、このようなマイクロモビリティがあれば、出かけるのが楽しくなるかも知れませんね!

▲ネイクルType-Y(出典:北海道ev研究開発・利活用プロジェクトFacebook)

以上、本日のコラムでは、EV・PHEVの暖房技術、寒冷地技術についてご紹介しました。新型日産リーフなどでは、ヒーター付ドアミラーや後部座席のシートヒーターなどを寒冷地オプションで付けられるようにもなっており、これまで、寒さに弱いと言われたEV・PHEVが大きく進化し始めていると言えそうです。
今後も、各社の技術開発に期待したいと思います。

●参考ウェブサイト:
-トヨタ『新型プリウスPHV』に搭載 「量産車世界初の新電動コンプレッサー」と「充電出力向上の新充電器」を開発(豊田自動織機・2017/02/16付ニュースリリース)
-ガスインジェクション機能付きヒートポンプ空調システム(デンソーウェブサイト)
-
-ヒートポンプシステム(日産自動車)
-安全性・搭載性に優れた温水 PTC ヒータの開発-電気自動車やプラグインハイブリッド車に適用- (三菱重工業技報)
-北海道の8社と中小機構、寒冷地仕様のEV開発 19年に100万円切る価格で発売(2017/2/28付日刊工業新聞)
-北海道ev研究開発・利活用プロジェクトFacebook

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