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2019年6月3日

【EV・PHEV】グローバルEVアウトルック(Global EV outlook)2019を読み解く

「クリーンエネルギー大臣会合(Clan Energy Ministerial:CEM)」と言う集まりが行われていることをご存知でしょうか。世界各国の環境やエネルギーに関する大臣級会合が毎年、世界各国で行われています。第10回の今回はカナダ・バンクーバーで5月29日に行われました。


その際、CEMの組織の一つである「電気自動車イニシアティブ」および国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)は、共同で作成した「Global Energy Outlook 2019(グローバルEVアウトルック)」という、電気自動車(EV)に関する将来見通しを発表しました。


▲電気自動車イニシアティブ参加国(出典:IEAウェブサイト)


Global EV Outlook自体は2013年に発行が始まって以来、毎年公表されていますが、本日のコラムでは、先月29日に発表されたばかりのGlobal EV Oultook2019を読み解いていきたいと思います。


○GoGoEV関連コラム:

-Global EV outlook 2018を読み解く(2018年6月11日付)



EV・PHEVの保有台数が500万台を突破

まず冒頭で報告されたのが、2018年末現在のEVおよびプラグインハイブリッド車(PHEV)の世界全体の保有台数が510万台に達し、1年で200万台も増加した点でした。


最もEV・PHEVの普及が進むのは中国で、2018年末で230万台、続いて欧州が120万台、米国が110万台となりました。なお、電動バイクや電動三輪車については世界全体で3億台に達しているとのことです。


▲国別EV・PHEV普及台数(出典:Global EV Outlook 2019)


世界全体のEVおよびPHEVによる電力需要は58TWh*(テラワットアワー)に達し、それによるCO2排出量が3,800万トンになったとのことです。ただし、同じ数のガソリン車やディーゼル車では7,800万トンのCO2排出となることから、実質4,000万トンのCO2削減**に貢献したと評価されています。

(*参考:日本全体の発電所による年間発電量がおよそ1000TWh)

(**参考:日本の年間CO2排出量が12億トン)



EV30@30キャンペーン

さて、今回のGlobal EV Outlook 2019の最大の特徴の一つが、EV30@30イニシアティブに対する言及が増えたこと、またそれによるシナリオが示されたことと言えます。


EV30@30とは、「電気自動車イニシアティブ」によって2017年に打ち出された世界的なキャンペーンで、2030年までに加盟国の全ての自動車(含:トラック・バス)について、新車販売シェアのうちのEV割合を30%以上とすることを目指すものです。

これには、上のCEMのうち、カナダ、中国、フィンランド、フランス、インド、日本、メキシコ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、英国の11か国が参加しています。


その上で、Global EV Oulook2019では、EV30@30シナリオにおける世界全体のEVおよびPHEV普及見通しを示しました。その値が、2030年におけるEV・PHEV合計で2億5千万台と見積もられました。


なんと、あと10年少しで、EV・PHEVは今の50倍に増える可能性が示されたことになります。


内訳は、EV乗用車が約1億5,000万台、PHEV乗用車が約6,000万台、EV商用車が約3,000万台、その他1,000万台前後となっています。


これまでのIEAによる見通しでは、EV・PHEVの2030年時点の普及見通しが1億2,000万台とされていたことから、EV30@30シナリオによる見通しが、とても強気の見通しとなっていることがわかります。ただし、昨今の中国をはじめとした世界各国の状況を見ていると、有り得ないとは言えない状況でしょう。


▲ev30@30シナリオにおけるEV・PHEV普及見通し(出典:Global EV Outlook 2019)



予想される資源生産量の不足

Global EV Outlook 2019では、EVおよびPHEVによるエネルギー消費量の低減効果やCO2排出量低減効果などの見積もりも行っていますが、その一方で、EV・PHEVの特有の課題として、資源生産時に相当量のエネルギーが必要なこと、また、コバルトやニッケル、リチウムなどの資源が現在の生産量を上回る可能性が示されました。


エネルギー消費量については、EVの場合、同サイズの他自動車に比べてCO2排出量は少ないですが、航続距離が延びるに従ってバッテリー生産のためのエネルギーが必要となり、航続距離が400km以上になると、ライフサイクル全体では、ハイブリッド車や燃料電池自動車と同レベルのCO2排出量となることが示されています。

(※1台当たりの廃棄までの走行距離を15万kmで見積もり。)


▲車種別のライフサイクルCO2排出量(出典:Global EV Outlook 2019)


また、EV30@30シナリオのような世界になった場合、2030年時点のコバルトおよびリチウム必要量が、EV向け以外も含んだ現在の世界全体の生産量の3倍以上必要となることが示されました。つまり、新たな鉱山開発や、リサイクルによる資源確保がますます大切になることがわかります。


▲世界のリチウム生産状況と見通し(2018年時の●が世界生産量、棒グラフがEV向け生産量、NPSはIEAの従来シナリオ、EV30@30は今回の新シナリオ)(出典:Global EV Outlook 2019)



まとめ

今回のGlobal EV Outlookでは、2018年に急速に進んだEV・PHEVの普及について取り上げられ、特に、中国、欧州、米国がその中心にいることが、あらためて整理されました。そして、この動きはますます加速し、世界全体に波及する可能性が見えてきました。

その一つが今回新たに行われた「EV30@30シナリオ」に基づく普及見通しの分析で、EV30@30キャンペーンについても数多くの言及が行われました。


一方、リチウムやコバルトなどの資源不足の可能性も指摘され、普及を阻む課題もあることがあることも示されました。


今のEV・PHEV普及の流れを止めないよう、世界中の業界関係者が一致し、課題の克服に取り組んでほしいと思います。

また、日本も他国に後れを取らないよう、政府においても一層の普及支援策を、引き続き実施してほしいと思います。


●参考ウェブサイト:

-Global EV Outlook 2019(IEAウェブサイト)

-30@30 initiative(IEAウェブサイト)

-IEA発行「世界の電気自動車の見通し(2017)」レポートの概要(外務省ウェブサイト)

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