【EV/PHEV】欧州における電気自動車に関する政策

掲載日:2016年5月30日

GoGoEVコラムをいつもお読みいただいている方、また、初めて目にされる方もアクセスくださり有難うございます。本日のコラムは少し広く一般的な視点に立ち、欧州各国の電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車(PHEV)について考えてみたいと思います。というのも、世界で最もEVが普及しているのは米国、次いで中国ですが、それに続くのが欧州で、特に、オランダやノルウェーでは、新車販売の多く(オランダ:10%、ノルウェー:20%)がEV/PHEVになっているなど、急速に認知が進んでいる状況があります。

これまで、各国でどのような政策が行われてきたのかを調べてみますと、2010年頃までは自動車の開発に対する補助などが中心であり、その後、デモンストレーションプロジェクトや徐々に普及のための補助が行われていました。


▲2009年時点調査における欧州のEV/PHEVに対する施策(出典:経済産業省資料)

その後、日本メーカーが相次ぎEV、PHEVをリリースし、それらがフランス・ルノーやプジョーシトロエンより発売され、欧州で普及が進んでいます。



▲2014年の世界の地域・車種別のEV・PHEVの販売台数

このように欧州で普及が進み始めた背景には、日本とは異なった理由もあるようです。特に、日本では充電インフラの整備およびEV・PHEV購入の補助施策が行われてきました。それに対し、欧州では他にも様々な施策が行われています。主な国について、現在取り組まれている内容も含めてご紹介します。

■オランダ
まず始めは、アウトランダーPHEVを中心にEV/PHEVの普及が進むオランダをご紹介します。これまでオランダでは充電器整備、税制優遇や駐車場優遇などの政策が行われてきました。特に充電器については普通充電器を中心に積極的な展開が行われています。

▲2013年におけるABBによる急速充電ネットワークイメージ

さらにオランダでは、今、化石燃料を燃やして走る車を2025年までに売れなくする法律が議論されています。これは、オランダの与党「労働党」が提案している法案であり、CO2ゼロ自動車を一気に普及させるための政策だとの事で、さらなるEVの普及を加速するために検討されています。

どちらかというとこれまでは、導入を優遇する政策が政府によって行われてきましたが、徐々にそれが規制という方向に移り始めたのかも知れません。世界の中で群を抜いて積極的にEV普及を目指すオランダの取り組みは今後も要注目です。

○GoGoEV関連コラム(2013年7月10日):
-【EV充電インフラ】オランダにおける急速充電ネットワーク構築をABBが実施

■ノルウェー
続いて、新車販売台数の20%以上がEV/PHEVによって占められるノルウェーをご紹介します。一時期、ノルウェーでは売れる自動車No.1がテスラモーターズのModel Sと言われました。「1台1000万円近くする車が何故?」と思ったのですが、そのからくりは税制優遇でした。

ModelSの場合、自動車価格と同程度、つまり1000万円程度の免税が受けられると言われています。すなわち、1000万円の現金があればガソリン車だとおよそ500万円程度の車しか買えないのが、EVだと、免税措置によって1000万円の車を買えるというわけです。他にも、駐車場や有料道路などの優遇、バス専用レーンの走行などもEVには許可されています。さらに、オスロ市内には水力発電によって得られた電力からの無料充電器も多数設置されているそうです。つまり、経済的メリットがガソリン車に対して強く働く環境にありました。

ところが、ノルウェーはEVへの移行だけではなく、さらに政策を推し進める準備をしています。それが、自動車を街から締め出す政策です。その動機としては環境対策という面に加え、市内の移動をより楽にするためだと伝えられていますが、具体的には自動車から自転車や路面電車などへの市内の移動を移行することを目指しているようです。さすがにここまで来ると、EVの出番もなさそうです。。。

ただし、商用車など除外項目は残るようで、環境面から考慮すれば商用車もEVのみということにもなるかも知れません。いずれにせよ、ガソリン車やディーゼル車など従来の自動車には随分厳しくなりそうですね。

○GoGoEV関連コラム(2013年11月20日付):
-【EV】ノルウェーの電気自動車事情

■ドイツ
続いては欧州の雄、ドイツのEVについての政策をご紹介します。ドイツは自動車製造大国ということもあってか、日本にとても似ているように思います。例えば、これまで取り組んできた政策には以下のようなものが挙げられます。
 (1)リチウムイオン電池の開発および補助
 (2)電池のリサイクル技術開発補助
 (3)充電スタンドの整備
 (4)自動車への補助金

これらに加え、今年4月にドイツ政府が発表した政策「電気自動車普及促進のために10億ユーロを補助」もまた、日本の政策にとても似ているように思います。

まず第一にその予算規模の設定です。補助のスキームは日本と異なるものの10億ユーロ(1250億円:1ユーロ=125円換算)の金額を提示しました。同様に、日本でも2012年度の補正予算として充電インフラ整備のために1005億円という規模の予算が用意されました。
ドイツの場合は、このうち3億ユーロをインフラ整備に、6億ユーロを自動車購入補助などに使うなど、割り振るそうですが、いずれも予算設定において1000億円もしくは10億ユーロというところを示したところなどは、何か発想が近い気がします。

もう一つ思うのが、コンソーシアムを組んで政策が官民共同で実行される点です。日本では充電インフラ整備の際、国が1/2や2/3を補助し、残りをトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、三菱自動車工業の4社が出資する「日本充電サービス」という会社が出資するスキームが組まれました。ドイツの場合はフォルクスワーゲン、BMW、ダイムラーと合意し、10億ユーロを政府と自動車会社が折半して出資するとのことです。
ドイツの自動車会社が電動化に力を入れていることも考慮すると、今後、ドイツでも充電インフラおよびEV/PHEVの普及が日本のように加速する可能性がありそうですね。

■デンマーク
今日のコラムで最後にご紹介するのは、デンマークです。デンマークは風力発電で有名で、2014年の電力供給のおよそ40%は風力発電で賄われたとの事です。このように風力発電が導入された背景には風況が安定しているという理由に加え、北海から算出されるガスの減少や、原子力を導入しないという政策、そして環境意識の高まりなどがあります。

そのような、環境先進国とも言えるデンマークでもこれまで、税制優遇を中心にEVの普及が促進されてきました。ノルウェーと同様、自動車に対して高い関税が課されているデンマークでは、上述のテスラモーターズModel Sの場合、税制優遇が無いと3260万円にもなりますが、それが車体価格のみで購入できてきました。


それに対してデンマーク政府が新たに打ち出した政策が、この税制優遇の廃止です。欧州の他の国とは一線を画し、EV普及よりも財政再建を選択した結果、優遇策を廃止する事にしたようです。税制優遇策はすでに縮小され始めており、2020年には全廃されるようです。

日本でもEV/PHEVに対する補助金は縮小されはじめており、これまで整備されたインフラを上手く使い、今後、どのように自立的に普及を促していくかが鍵と言えそうです。

以上、本日のコラムでは欧州におけるEVに関する政策を取り上げてみました。少し堅い内容でしたが、世界の動きを知ると言う意味で、何らかのご参考になればと思います。

●参考ウェブサイト:
-電気自動車等普及促進計画における施策とその背景・調査結果との関連性(経済産業省)
-The Netherlands is making moves to ban all non-electric vehicles by 2025(Science Alart 2016.04.13)
-オランダ労働党、ガソリンとディーゼル自動車の段階的販売禁止で検討入り(The Business Newsline 2016.04.14)
-ノルウェー、首都オスロ中心部への自家用車乗り入れを全面禁止に(The Huffington Post 2015.11.16)
-独政府、電動車両購入に補助金 EV1台50万円 (日本経済新聞 2016.04.28)
-総発電量の40%弱を風力で、2014年のデンマーク(スマートジャパン 2015.01.15)
-テスラの価格が3倍に デンマーク政府、EV“税優遇廃止”の衝撃(Forbes 2015.10.08)

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