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2014年10月16日

【EV映画】誰が電気自動車を殺したか?

クリス・ペイン監督の2006年の作品「誰が電気自動車を殺したか(英題:Who Killed the Electric Car?)」を見る機会がありましたので、感じた点および内容について触れたいと思います。


この作品は、1990年より米国カルフォルニア州で議論されているZEV(Zero-Emission-Vehicle)規制と、その規制に伴い米国General Motors Company(以下、GM社)が1997年に発売を開始した「EV1」と呼ばれる電気自動車に関して、その顛末をとらえたドキュメンタリー映画です。


▲General Motors EV1(出典:Idaho National Laboratoryウェブサイト)


GM社のEV1は元々リースにて販売が行われていました。しかし、ある日突然、回収されることになります。そして、回収されたEV1は次々と廃棄処分されていきます。一方、カルフォルニア州大気資源局は1996~97年頃から登場し始めた電気自動車を考慮し、自動車メーカーに一定のZero Emission車の販売を義務付ける規制を検討し始めます。


しかし、ZEV規制は各方面からの反対を受け、結果的に内容を後退せざるを得なくなります。例えば、Zero Emission車の販売台数・割合を義務付ける規則から、PZEV(Partial zero-emissions vehicle)やATPZEV(Advanced Technology Partial zero-emissions vehicle)などのカテゴリを設け、例えば、「ATPZEV2台の販売をZEV1台とみなす」というような規制緩和が行われます。


また、電気自動車自体に対しても、石油会社などがネガティブキャンペーンを行い、自動車会社内部でも反対が起こります。そして、燃料電池自動車(FCV)の登場がZero Emission車の本命がFCVであると業界内で位置づけられるようになります。EVにとっては強い逆風です。


そして、2003年、遂に全てのEV1が回収されます。トヨタやホンダ、フォードなどから発売されていた電気自動車も相次いでリース販売を終了します。映画ではこの理由について、自動車会社、石油会社、連邦政府、加州大気資源局、燃料電池自動車、消費者、バッテリーを容疑者として挙げ、それらが有罪か無罪かを議論しています。


ところで、映画の中で気になった点が2点ほどありました。それは、当時整備されていた充電スタンドについてあまり触れられていない点、そして、電気自動車のコストについてあまり触れられず、性能を非常にポジティブに描いている点です。


当時、急速充電器は存在せず、全て「普通充電」でした。また、現在のように広範囲にわたる充電器の設置は行われておらず、実質的に近距離用途でした。そのため、2台目保有などが可能な人が購入することができました。


また、コストが高いにも関わらずEV1は月額$250~$500でリースされていました。そのため、自動車会社は自動車自体で赤字を抱え、同時に、特別なサポート体制も用意する必要がありました。しかし、当時の自動車の性能は1充電での航続距離が100~150kmであり、また、EV1は初期型で電池の事故を起こしています。このような自動車に対して、自動車会社の立場で考えれば、いくら消費者が欲しいと思い、また、政府の規制によって売らざるを得ないとしても、赤字を垂れ流してまで売り続ける事は難しいと思います。


現在、EVに力を入れる日産自動車も赤字覚悟で事業を行っているとされ、同社は急速充電器の設置やサポート体制にも大きな投資をしています。また、当初予想していた以上にLEAFが売れず、廉価版リーフSの投入や、価格の引き下げなどを行ってきた事は、周知のとおりです。


映画内でEV1を購入したい人のリストが数千あると言うインタビューコメントがありましたが、実際に市場で評価を得て、生産が軌道にのるだけの販売が進むには、相当の努力が必要であり、いみじくも現在のEV販売状況がそれを証明しています。


また、日産に限って言えば、経営危機の影響からクリーン自動車市場においてトヨタ、ホンダに遅れをとり、ハイブリッド技術を当初トヨタから供与されていました。そのため、日産にとってEVは競合他社に対する切り札であり、ゴーン社長の下、力強く販売が進められてきました。


ところが、GM社は2000年代初頭、ピックアップトラックの販売が好調であり、現在の日産のような覚悟を持って「EV1」を売り続ける事が本当にできたのか考えると、筆者は疑問に思います。特に、赤字製品を理由もなく売り続けるコンセンサスを社内で確立することは、難しかったのではないでしょうか。


ZEV規制が緩和され、2000年代初頭まで続いた電気自動車への取り組みが一段落した後、米国の自動車メーカーは大型車販売に傾倒します。しかし、日本メーカーだけが着実に環境車の開発を進め、EV1の回収完了のほぼ同じ時期に、トヨタは2代目プリウスを米国に投入、人気を博し始めます。


その後、ハイブリッドカーは急速に世界中で受け入れられていき、人々の燃費や環境に対する意識が徐々に変わり始めていきます。そして、その流れは今日にも脈々とつながり、米国ではテスラモーターズの電気自動車や、GMのプラグインハイブリッド車、日産の電気自動車、トヨタのFCVへと繋がっています。


映画が製作された2006年頃の見方では、一部の企業や組織が既得権益を保護するために電気自動車を潰したとの見方もできますが、反対にそれら一連の動きが今のエコカーの普及に大きく貢献しているようにも感じます。すなわち、老舗企業が既存事業の維持を狙っている間に新興企業が着実に開発を進め、気付けば老舗企業を出し抜く様子は、まるで「イノベーションのジレンマ」で描かれる世界そのものと感じます。


映画はYoutubeで300円で全編翻訳付きで視聴できますので、もし余裕があります方はご覧になってください。また、もしよろしければコメントを頂戴できますと幸いです。


▲誰が電気自動車を殺したか(Youtube)


●参考ウェブサイト:

-1997 General Motors EV1 with PbA Batteries(アイダホ国立研究所)

-Zero Emission Vehicle (ZEV) Program(カルフォルニア州大気資源局)

-カルフォルニア州ZEV論争(八重樫武久 Cordia Blog)

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