今月8日のGoGoEVコラムにて軽トラEVの販売台数推移についてご紹介しました。思った以上の反響を頂き、軽トラEVについて関心を持っていらっしゃる方が多いこともわかりました。元々軽トラEVがリリースされた際、筆者は、これは確実に売れるだろうと想定していたので、予測が大きく外れたことにショックを受けていました。

○GoGoEV関連コラム（2016年2月8日付）

-【EV×軽トラ】軽トラEVの販売台数

それでは、軽トラEV（Minicab Miev トラック）の兄弟にあたる軽EVバン（Minicab Miev）の販売状況は一体どうなっているのだろうという興味を持ち、今回、調べてみましたのでご紹介します。

まず、販売台数がどのようになっているかを調べてみました。2014年ならびに2015年の販売実績データを見ると、Minicab Mievのシェアは0.3%。Minicab Mievトラックのシェア（0.1%）に比べると売れているように見えますが、同じ三菱自動車Minicabシリーズのシェアに比べても低い結果と言えそうです。

では、なぜ売れないのか？？

EVトラックと同様、他の軽バンの仕様（スペック）と比べてみました。比較するのは14年、15年シェアNo.1のSUZUKI　エブリの廉価モデル（機種名PA）の5速オートマチックモデルです。ミニキャブミーブに関しては10.5kWhモデルと16kWhモデルの2シーターで比較しました。

比較の結果は軽トラEVとほぼ同じことが言えそうです。根本的に1充電当たりの航続距離及び価格に大きな差があることがわかりました。

軽EVバンは軽トラEVと比べ、運送物流の現場や牛乳・お弁当の配送など、サービス産業を中心に使用されていることを目にします。これを考えると、軽トラEVで考えられるような、過疎地でのガソリンの給油の面倒さが解消される等のメリットは余りなく、買うときのインセンティブは事業運営に支障をきたさないという前提のもとで、ライフサイクルコストがどちらの方が安いのかということになるのかという点になると考えられます。

それでは、購入してから廃車にするまでのライフサイクルコストはどの程度でしょうか。10万㎞走行時の燃料コストを2車種で比較してみました。

10万㎞走行した際、現在のガソリン価格水準(110円/ℓ）では、夜間充電をしたケースで約46万円程度のコスト回収となります。これ以外にもその他整備費用を考慮する必要がありますが、単純に燃料コストで比較すると、現在のガソリン価格水準では元を取るのに約20万㎞走行する必要が出ます。

つまり、先ほど述べたような、運送物流業や配送が必要な業界など、ちょこまかとした移動が多い分野で、かつ、購入してから廃車にするまで、少なくとも20万km以上走行するような場合、利用価値が出てくると言えます。なお、ガソリン価格が現在以上に上がれば投資回収期間はより短くなり、さらに、EVを使っているということでの企業イメージ向上につながることも期待できそうです。

すでに、ヤマト運輸など大手宅配業でも少しずつ導入されており、実績や成功事例も増えつつあります。三菱自動車のウェブサイト上にもMinicab Mievオーナーさんの声をまとめたページがありますので、ご参照ください。＞＞三菱自動車　オーナーズボイス

オーナーさんの声には、坂道が多い配達ルートにおいてEVのパワーの安定感や、イベントにおける電源としての利用、会社のイメージアップなどの意見がありますね。ちなみに、いつもお世話になっているGoGoEVユーザーさんも出ていらっしゃいます！

以上、結論としては、軽EVバンは、近距離かつ比較的同一のルートでの走行がある程度見込まれる場合に適しており、一方で長距離の配送や不定期ルートには不向きであると言えそうです。また、ガソリン価格にもよりますが、ある程度の期間使用する前提であればライフサイクル全体で費用回収は可能となる可能性があります。ただし、その場合は充電を深夜料金などを活用するなどの工夫が必要そうです。しかし、軽トラEVに比べて使い方の可能性は広く、今後、電池の改良や電池コスト低減に伴ってある程度の市場が見込めるかもしれません。新たな車種が今後出てくることを期待したいと思います。

●参考ウェブサイト：

-Mini cab Miev

-SUZUKI　エブリ　スペック・価格