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2017年3月27日
普段のGoGoEVコラムでは、電気自動車の”イマ”を多く取り上げています。本日は趣向を変えて、電気自動車が世の中に登場した1830年以降の歴史を振り返っていきたいと思います。今の電気自動車の形に到るまで、どのようなことがあったのでしょうか。
読者の皆さんには、電気自動車は新しい技術だ、という認識がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、電気自動車は実のところ、ガソリン車よりも前に誕生していたのです。
世界初めての電気自動車は、現在から約180年も前の1830年代に誕生しました。(世界初のガソリン車は1886年)
しかし誰が一番最初に発明したかには諸説が有り、現在のところ以下の5名の人物の名が挙げられています。
最も広く認知されているのがスコットランドのアンダーソンでしょう。彼が開発した車両は一次電池を搭載し、馬なし馬車(Horeseles Carriage)と呼ばれ、凸凹道を走行したそうです。最も広く認知されている理由としては、唯一初めから人を乗せる設計だったからではないでしょうか。制作年は1832~1839年の間と特定されていません。
つぎに広く認知されているのがストラチン教授その助手です。設計を教授がおこない、実際の制作組立は制作年は1835年に助手のクリストファー・ベッカーが行いました。制作された車両は小型の三輪車であり、オランダのグローニンゲン博物館に展示されているそうです。
ダベンポートはボルタ電池を使って、電車の模型を走らせました。つまりレールの上を走り、給電はレールから行われ、据え置きのボルタ電池であったそうです。(線路から給電するとは鉄道模型みたいですね)自己の発明したモータの売り込みのためのデモだったと言われています。こちらも制作年は1835年とされています。
ダビットソンも自身の発明したモーターのデモのために様々な車両を作成し、実験を行いました。1837年に模型の電動機関者を作り、1841年には5トンの4輪車両を1.5マイル走らせました。自分の名刺に「電動機関者の産みの親」と入れていたというエピソードが存在しています。
イェドリク・アーニョシュ(ハンガリー)
イェドリク・アーニョシュが実は一番早く電動車両を制作したと言われており、その時期は1828年です。しかし修道士であった彼は自己の発明を広く知らせることがなかったため、世間には認知されませんでした。
これらのとおり最初期の段階に開発された車両は、デモンストレーション用や実験目的としており、速度の面でも、人を乗せるという面でも車両として満足するものではありませんでした。それに加え一次電池(充電できない電池)を使用していたこともあり、実用化には程遠かったと言えるでしょう。
1899年 ベルギー人の土木技師ジェナッツィが製作した電気自動車、ジャメ・コンタクト号は最高速度106km/hを記録したのですが、この記録は1902年まで破られませんでした。
2台の25kwのダイレクトドライブモータを搭載し、バッテリは200V、124Aととてつもない仕様でした。
単純な比較はできませんが、25kw×2=50kwとリーフの80kwに少し劣る程度の物が約120年も前に存在していたと考えると、その凄さがわかります。なおこの自動車のレプリカはドイツの博物館に展示してあります。ちなみに「ジャメ・コンタント」とは「決して満足しない」という意味であり、性能も相まって開発者の熱意が伝わって来るようです。
余談ですが2011年に日本EVクラブが「ジャメ・コンタント・オマージュ」というEVを制作、翌年には「ジャメ・コンタント・オマージュⅡ」をキットとして台数限定で販売したそうです。値段は255万円(講習会費込み)
▲ジェメ・コンタント号(左)とジャメ・コンタント・オマージュⅡ(右)(出典:日本EVクラブwebサイト)
ジャメ・コンタント号の偉業もあり、電気自動車の優位性が認識されて一般社会への普及が一気に加速しました。1900年頃にはアメリカの自動車生産台数の40%は電気自動車が占め、ニューヨークのタクシーは全て電気自動車と呼ばれる時代もあったのです。
▲1900年代の電気自動車(左からエジソンの電気自動車、ベイカーエレクトリック、Detroit Erectric(出典:次世代自動車振興センター、トヨタ博物館、Edison Afret Forty ))
このように広がっていった背景には、以下のメリットがあったからと言われています。
《メリット》・騒音や振動がない
・排ガスや匂いもない
・ギアシフトが不要で操作が楽
・始動に時間と手間がかからない。(ガソリン車はクランクシャフトを回す必要があり、蒸気車は機関の暖機に20分かかる)
それに対して、電気自動車の苦手とする部分もあり、それは下記のとおりでした。
《デメリット》・航続距離が短い(ただし水の補給を要する蒸気車よりは長い)
・最高速度が低い
・登板能力が低い
これらの特徴から、シティーカーとして位置づけられていました。この位置づけは現在とあまり変わりませんね。また、女性にも人気が高かったそうです。
なお写真中列のベイカーエレクトリックは、トヨタ博物館に展示されており、2014年には走行披露が行われました。100年以上も前の自動車がまだ動くとはびっくりですね。この可愛らしい外見をみると、人気が高かったのも納得です。
しかしそんな電気自動車のイケイケムードも徐々に陰りが見えてきます。ガソリン車の技術が徐々に進歩し、1904年にはフランスのガソリン車、ダラクが100マイル(168.2km/h)を突破たことから、ガソリン車の優位性が明らかとなってきました。
さらに1908年にはかの有名な「T型フォード」が発売され、爆発的に売れ、電気自動車の影がさらに薄くなってしまったのです。ガソリン車台頭の背景には、各国の政策が化石燃料を使う方向に向いていたためでしょう。内燃機関の技術が政府に支援されていたのに対し、電池の技術は援助を得られず、研究開発が進まなかったため、内燃機関の発展に遅れをとっていったのです。
その結果、1920年頃には電気自動車は1台も街中で見ることはなくなってしまいました。
今日のコラムは1830年代から1920年代までの、電気自動車の黎明期から一時衰退期までの流れについてみてきました。続きは再び電気自動車が注目され始めるところから、お送りしたいと思います。
・世界初の電気自動車は約180年前!ガソリン車より早い!
・EVのメリットデメリットは当時と現在ではあまり変化がない
・EVの衰退は化石燃料を使いたい時代の流れに合致していなかった。
●参考ウェブサイト
-森本雅之,”最初の電気自動車についての考察”,電気学会論文誌D(産業応用部門誌)Vol. 133 (2013)
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