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2017年5月22日
最近、ニュースや新聞紙面などでも見かける自動運転技術。この自動運転技術が電気自動車(EV)と相性が良いのを、皆さん、ご存知だったでしょうか?
というのも、EVは加速や減速の操作を電気的にモーターやブレーキを介して操作できるため、高精度のレスポンスが要求される自動運転に向いているとされています。とは言え、その実態はどうなのでしょうか。今回、自動運転EVの実態を探るべく、自動運転EVバス「Robot Shuttle(ロボシャトル)」に体験乗車してきましたので、ご報告します。
○GoGoEV関連コラム:
-【EV】なぜ自動運転ってEVで実験しているの?(2015年7月31日付)
-【自動運転】電動自動車と自動運転技術との親和性に関する一考察
ロボシャトルとは、フランスの自動運転電気自動車メーカEasyMileとDeNAが連携し、実証実験を進めている自動運転EVバスです。すでに日本各所での実証実験が実施されており、秋田県仙北市の田沢湖湖畔、千葉市のイオンモール幕張新都心、福岡市の九州大学伊都キャンパスなどで実際にお客さんを乗せて走る実験が行われています。なお、九州大学では現在も実証実験が継続されています。
今回、筆者が体験したイベントはDeNAと横浜市が提携して推進する「無人運転サービス・AIを用いた地域交通課題解決プロジェクト」の一環で、2017年4月27日(木)、28日(金)に金沢動物園内で開催されたイベントです。
金沢動物園は、横浜市にある市立動物園で、今回は金沢文庫駅からバスに乗車。約12分で到着しました。ゴールデンウィーク間近ということもあり、筆者が訪れた日は、鯉のぼりが気持ちよさそうに泳いでいました。入場料500円を支払って入場です。この金額で思う存分遊べることを考えると、とても良い場所です!
さて、今回のお目当てはロボシャトル。入場して早々、看板を発見!思った以上にこじんまりとした告知です。もっと大々的に宣伝してもいいのでは・・・?と思いつつ、体験乗車の会場を探します。その場所は動物園の入り口にあるトンネルを出てすぐの場所にありました。
平日ということもあったのか、比較的体験会場は空いていました。この日、筆者は午後に訪れたのですが、スタッフに聞くと午前中が体験者が多かったようです。いいタイミングで来ることができました。
さて、体験乗車の様子を簡単に紹介したいと思います。ドアは両側に開き、入り口は縦にも横にも広々。車体自体が低床なため、乗降りがとっても楽に感じます。
さらに、降り口側の車体が沈み込み、スロープも自動で展開するため、お年寄りや車椅子の方にも安心ではないでしょうか。実際に筆者が体験したときも、その様子を目の当たりにしました。
▲乗降状態 右写真はスロープが展開しているところ
ロボットシャトルの定員は着席6人+立席6人の計12人。入り口だけでなく車内も広々です。立って乗っても特に頭上の窮屈さを感じることもありません。この車体サイズでこの広さは、運転席が必要ない自動運転だからできることではないでしょうか。また、
窓も大きく外の景色も良く見えるので、観光バスとしても最適と言えるかも知れません。今回の実証実験は動物園で行われたので、横にキリンを見ながらの走行と、何とも贅沢な体験となりました。車内に目を移すとパネルが2つあり、共に現在位置が表示されます。
▲車内の様子 座席(左)とパネル(中央、右) パネルに現在地が正しく計測されていることが示されている
自動運転特有の部分として、新しい乗り物だと感じた点も新鮮でした。と言うのも、今回の体験乗車では片道200m程度のコースを往復するコースを走行したのですが、自動運転のため前後の区別もなく、方向転換をせずにそのまま逆方向で戻っていきます。これが、車というより電車といった感覚を覚え、新鮮に感じました。立席があることを考えると、つり革もあってもいいかもしれませんね。
一方で、乗り心地としては思ったより揺れた気がしました。ただ普通の自動車とは速度域も違い、また、コースが石畳だったせいもあるかも知れません。それ以外で取り立てて気になることはなく、開いた窓から路面とタイヤのグリップ音がよく聞こえるほど静かな走行でした。さすがEVです!
ロボットシャトルは、車体の上部に取り付けたGPSで大まかな位置を把握し、車体下部4隅に付けられたレーザーセンサで周囲環境を3次元的に認識することで現在地を取得します。センサ類によって取得した現在地と、事前に設定したルートを照らし合わせることで自動運転が行われる仕組みとなっています。ただし、ルート設定は人が操作しながら実際に走行させることで設定するそうです。
また、走行速度も事前設定を行っており、曲がり道では速度を落とし、安全に走行できることをアピールしていました。設定されたルートを走る精度は非常に高く、下に記載の写真のとおり「轍(わだち)」がくっきり見えるほどでした。
▲轍の跡(お分かりになるでしょうか…?)
とは言え、ここまで正確なルートを走る必要があるかは疑問です。仮に自動運転車が普及し、多くの車がこの精度で毎回道路の同じ場所を走るようになってしまうと、反対に道路に轍が付き路面状況の変化や、それに伴う頻繁な保守作業の発生をもたらすかもしれません。その意味で、走行位置をある程度分散させるなどの工夫も必要かも知れません。
ちなみに、同乗していた説明員にこの点をお話したところ、同様の認識をされていらっしゃるようで、自動運転の今後の課題との事です。
また、ロボシャトルは多数のセンサ類を駆使して安全を確保します。その仕組みとして大きく(1)車体下部のレーザセンサ、(2)車体正面中部のレーザセンサと、(3)車体正面カメラを使用し、(1)車体下部のセンサは足元程度の高さの障害物を検知、(2)車体中部のセンサと(3)車体正面カメラがそれ以外の広い範囲をカバーするようになっています。
ただ、安全性について今の所「限定条件下」において安全であるとの見解であり、雨や霧といった悪天候時は、それらセンサが誤作動してしまう可能性があることから、まだまだ改良が必要だとのことです。とはいえ、人や障害物が車の前方にいた場合は、しっかり停車するようになっています。(残念ながらその実験はさせてもらえませんでしたが…(笑))
また、小動物などの飛び出しなどには今のところ対応していません。それは(1)車体下部のレーザセンサは約30cm程度の高さについているため、それ以下の例えば小動物などがいても気づかないということです。現状、その対応策としては、乗車しているオペレータが車内に有る緊急停止スイッチを押すことになっています。
▲センサ類と充電プラグの配置
ロボシャトルは自動運転車でありつつも、同時にEVでもあります。そこで、EVとして気になるところについてもチェックしました。
まず電池性能と充電方法ですが、ロボシャトルは市販EVと同様、リチウムイオン電池を使用し、今回の体験搭乗会程度であれば、10時間程度は無充電で稼働できます。充電方法は実は通常の市販のEVで利用されているCHAdeMOなどの規格ではなく、通常のコンセントからコネクタ変換器を通じて200Vで充電できるタイプを採用していました。そのため、普通充電器程度の設備があれば十分運用できます。ただ今回、コネクタ部分も見たかったのですが、残念ながらそこは社外秘と言われ、見せて頂けませんでした…
さて、最後にEVと自動運転の親和性ですが、説明員の方にお話を聞いたところ、加速性能や細やかな制御のしやすさもありますが、1番大きい点に『開発のし易さ』を挙げられていた点も印象的でした。
というのも、ガソリンなどの内燃機関自動車と違い機械要素が少なく全て電気的に制御可能であり、電気的なハードウェアとそれを動かすソフトウェアのみで自動車を開発できる点が評価されているようでした。たしかに、電流の制御だけで速度や出力を制御できる電動機の方がシンプルな構成と言え、また、それを制御するソフトウェアの開発環境が揃っていることも、自動運転EVの開発を推し進める要素と言えそうです。このように、EVの普及や技術進歩を考えたとき、開発のしやすさというのも大きなアドバンテージと言えるでしょう。
EV+自動運転が組み合わされた今後の新しい形、どのようになっていくか楽しみですね。
●参考ウェブサイト:
-ロボシャトル詳細(DeNA Robot Shuttle webサイト)
-DeNAと横浜市が「無人運転サービス・AIを用いた地域交通課題解決プロジェクト」を開始(2017年4月24日付DeNAプレスリリース)
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