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2016年2月12日
三菱自動車工業株式会社が今月3日発表した第三四半期(2015年9月〜12月)の決算説明会で、今後の商品展開の考えについての発表が行われました。その方向は三菱自動車が2009年にi-mievを発売して以来探ってきた「自動車の電動化」の流れをさらに加速させるものであり、同社の行方を決定づけるものと思われます。本日のコラムでは三菱自動車の動きから、自動車の電動化について取り上げたいと思います。
自動車業界の中では随分以前より自動車の電動化の流れは始まっていたと考えられていました。とりわけ、1996年にトヨタ自動車がハイブリッド車プリウスを市販車として世に出し急速に普及し始めて以降、自動車の電動化が一気に進み始めたと考えられています。
一般的に電気自動車というと、リーフやi-mievのような自動車を思い描く方も多いかもしれません。しかし、専門家の間では、電気自動車とはモーターを積んだ自動車を指し、ハイブリッド車も立派な電気自動車です。そこで、専門論文などでは燃料別で区別するため、以下のような呼び方をします。
・バッテリー電気自動車(BEV)
・ハイブリッド電気自動車(HEV)
・プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)
・水素燃料電池電気自動車(FCEV)
ここでポイントなのは、これまでトヨタ自動車を中心にハイブリッド車が電動化を引っ張ってきたものが、徐々にPHEVベースになりつつあるというのが、今回の三菱自動車の発表のポイントになります。なぜこのようになるかというと、トヨタのハイブリッド技術に対するハードルの高さと電池価格の低下によりプラグイン化が容易にできるようになってきたことが挙げられます。
○GoGoEV関連コラム(2015年4月17日付):
ハイブリッド技術には主に以下の3つのタイプに分けられます。このうち、最も効率が良いと言われるものがプリウスが採用した「シリーズ/パラレルハイブリッド」です。この場合、充電せずともブレーキ時のエネルギー回生のみで40km/L(カタログ値)などの燃費を実現できてきました。
▲ハイブリッドカーにおける種類の分類(出典:NTN TECHNICAL REVIEW No.79,2011)
しかしこの技術はトヨタ自動車の虎の子であり、なかなか外に出ません。特許が徐々に切れ始めたとはいえ、ノウハウも相当注ぎ込まれ、また約20年の技術的蓄積に対しては一朝一夕では太刀打ちできません。それに対し比較的技術的に容易で、他社も含めて広く採用されているのがパラレルハイブリッド、シリーズハイブリッドでした。
とりわけシリーズハイブリッドはシンプルな仕組みで、エンジンは発電のみに使われ、基本的にはモーターのみで走行します。これがアウトランダーのようなSUVに必要な性能とマッチし、電池容量を増やし充電可能なPHEVと設定したことで大ヒットしたと言えるでしょう。また、BMW i3のレンジエクステンダータイプもシリーズハイブリッドを充電可能としたPHEVと言えます。
すなわち、ハイブリッド車の普及と進歩がPHEV普及のための地盤を徐々に作り、そこに環境規制が加わって一気にPHEVの市場が広がっているのが今の現状と言って良いかもしれません。
ここまではPHEVについての概論ですが、そのような状況に対し三菱自動車は今後5年で、電動車の市場が5倍になると予想しています。
▲三菱自動車による今後の電動車の市場予測(出典:三菱自動車2015年第三四半期決算発表資料)
さらに驚くのは、SUVやスポーティタイプの自動車に絞って電動化を進めていくという方針です。これまで環境に良く燃費の良い自動車は、いわゆるプリウス・アクア所有者に代表されるような一定の年齢層や主婦層を対象としてきたところが、三菱自動車の電動車の投入方針はそれとは一線を画しています。
▲三菱自動車の投入する電動車(出典:三菱自動車2015年第三四半期決算発表資料)
そして、三菱自動車のBEV、PHEVであるアウトランダー、ミーブ、ミニキャブはあくまで一部の派生シリーズとして位置付けられてきたように思われますが、今回の方針で同社の主軸としての立ち位置になったことが以下の表からよくわかります。つまり、三菱自動車は今後、電動化を戦略の柱として進めていくことを明らかにしたと言えそうです。
▲三菱自動車の商品戦略(出典:三菱自動車2015年第三四半期決算発表資料)
自動車の電動化においてハイブリッド車から徐々にPHEVに変わっていく流れは海外メーカーの自動車商品戦略を見ても既に現れています。今年はトヨタもプリウスPHVを新たにリリースするといわれています。今後、どのような形でPHEVの市場が広がっていくか楽しみです。
●参考ウェブサイト:
-自動車の環境・エネルギー技術に関わる将来展望~ 従来車の技術改善から電動化へ ~(NTN TECHNICAL REVIEW No.79,2011)
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