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2017年1月30日
電気自動車(EV)業界において、スタートアップ企業から世界企業にまでなった企業というと、やはり米国テスラモーターズが最初に思い浮かびます。筆者が2010年にシリコンバレーにある同社のストア兼サービスショップを訪れた際、その後同社がここまで世界的企業になるとは当時、全く想像できませんでした。テスラモーターズは2003年の創業以降、14年の歳月をかけ、ロードスター、ModelS、ModelX、Model3と次々に新たなEVを生み出しています。
一方、世界中では他にも新興のEVベンチャー企業、また、最近では燃料電池(FC)を用いたFCVベンチャー企業も生まれつつあります。特に、中国系企業の伸長は目覚ましいものがあります。本日のコラムではこれらEVベンチャー企業の今をご紹介したいと思います。
○GoGoEV関連コラム:
-【EV】日本発EVベンチャー世界への挑戦(2015年9月7日付)
-【EV】米PHEVベンチャー「フィスカー」が再出発(2014年5月15日付)
-【EV】水の上を走るEV(FOMM)(2014年3月10日付)
-【特集記事】グリーンロードモータース小間社長インタビュー(第3回):GLMの戦略、そして今後の動向(2013年7月18日付)
-【特集記事】グリーンロードモータース小間社長インタビュー(第2回):ピュアスポーツEVとGLMのライバル(2013年7月17日付)
-【特集記事】グリーンロードモータース小間社長インタビュー(第1回):GLMの始まりから京都へのこだわり、そしてコア技術(2013年7月16日付)
-【EV・スタートアップ】電気自動車関係のスタートアップ企業(2013年5月31日付)
-【EV】電気自動車市場は充電を必要としている「Electric Vehicle Market Looks for a Recharge」(2013年5月14日付)
■目次
1. ファラデーフューチャーファラデーフューチャー社は中国動画配信最大手のLeEco(楽視/乐视生态)を率いる賈躍亭(ジア・ユエティン)氏がCEOを勤め、米国ロサンゼルスに本拠地を置く新興EVベンチャー企業です。LeEco社は動画配信業界で世界大手のNETFLIXと提携するなど、中国本土での動画配信事業で成功しており、それらの実績から、新たな事業へと進出しているものと考えられます。
一方、ファラデーフューチャー社の親会社であるLeEco社は中国本土では Le Supercar(楽視超級汽車)という会社を設立、複数のベンチャーキャピタルから1000億円以上の資金を集めると共に、既に英国アストンマーチン社および中国の自動車メーカーである広州汽車集団と提携を結んでいました。
また、2016年からは、既にフォーミュラEに参戦していたドラゴン・レーシングとファラデーフューチャーとがパートナーシップ契約を結び、チーム名に「ファラデーフューチャー」の名がつくようになりました。このファラデーフューチャーのフォーミュラEの車体を良く見ると、LeEcoのステッカーがフロントウィングの横に貼られています。
なお、言うまでもありませんが、ファラデーフューチャー社はLe Supercar(楽視超級汽車)とは提携関係にあります。
ファラデーフューチャー社は既に、FFZERO1というスポーツカーを試作し、2016年1月に米国ラスベガスで開かれた家電見本市CES2016の会場でお披露目しました。注目は最高時速320km、1000馬力ともいわれるそのパワーです。ただし、一人乗りの純スポーツカーで、まさにレーシングカーのような自動車になっています。
▲フォーミュラE・ファラデーフューチャーマシン(出典:ファラデーフューチャー社WEBサイト)
▲ファラデーフューチャーFFZERO1(出典:ファラデーフューチャー社WEBサイト)
▲ファラデーフューチャーFFZERO1(出典:Youtube)
また、今年1月3日、市販を前提としたEV「FF91」をCES2017に合わせて発表しました。FFZERO1と異なりFF91はSUVタイプであり、価格は「200万元以下(3200万円以下:1元=16円換算)」とも言われています。同社初の市販車として発売が楽しみです。
▲ファラデーフューチャーFF91(出典:ファラデーフューチャー社WEBサイト)
続いてご紹介するのが、ファラデーフューチャー社の姉妹会社とも言える楽視超級汽車が開発するEV「LeSEE」です。既に楽視(LeEco)社は浙江省北部の莫干山近郊に、自動車工場とテーマパークとを備えた施設を建設すると発表していますが、この工場での年間計画年産能力は40万台とされ、総投資額は3,000億円にのぼると見積もられています。第一期の投資は約900億円で、年間20万台を生産可能となる見込みとのことです。
▲LeEco社 LeSee(出典:LeEco社WEBサイト)
昨年4月には賈躍亭(ジア・ユエティン)CEOが自ら運転して登場してLeSeeについて発表しています。ただ、ファラデーフューチャー社およびLeEco社(Le Supercar社)は共に、事業上の課題を抱えているとの見方も出始めています。フォーブスの報道によると、ファラデーフューチャー社は幹部が相次いで退職していると共に、LeEco社も中国で計画している工場建設において政府からの許可が下りていないとされています。
いずれにせよ、数千億単位の資金を集めた賈躍亭(ジア・ユエティン)氏が率いる二つの大型EVベンチャー企業が、今後どのようになるのか注目です。
ルシード・モータースは2007年にテスラモーターズのヴァイスプレジデントを務めていたPeter Rawlinson氏によって設立されたEVベンチャー企業です。同社には複数のベンチャーキャピタルや三井住友銀行、また、ファラデーフューチャーに出資するLeEcoも出資をしており、2016年までに既に150億円以上が投資されています。
ルシード・モータースは当初、電池の開発に注力していましたが、2014年に初めての試作車を公開、その後、昨年Airと名付けられたEVを公開しました。現在はサムスン社製の電池を利用し、前輪400馬力、後輪600馬力の仕様となっています。今後、2022年までに2000人の従業員を雇用する工場をアリゾナ州に750億円以上をかけて建設する予定とのことで、2万~13万台の自動車を製造する予定です。
▲ルシード・モータース社Air(出典:ルシード・モータース社Webサイト)
▲ルシード・モータース社Air(出典:Youtube)
2007年に米国カルフォルニア州のアナハイムにて創業したフィスカー・オートモーティブは高級PHEV「Karma(カルマ)」を製造していました。当時、マサチューセッツ工科大発のバッテリーベンチャー企業A123 Systemsの破たんをキッカケに電池調達が出来ず連鎖的に倒産し、同社CEOのヘンリック・フィスカー氏は退任し、中国の万向集団(Wanxiang Group)が買収しました。
それまでにKarmaは世界1,800台以上が販売されており、またリコールなどの対応もあり、会社の立て直しが急務でした。2015年には社名をカルマオートモーティブに変更、2016年には新たなPHEV車種「Revero(レヴェーロ)」が公開されました。気になる価格は13万USドルと1500万円程度となっています。
仕様は、260馬力のエンジンおよび403馬力のリア駆動モーター、21.4kWhの充電電池により80km、ガソリンと併せて480kmの航続距離が可能です。また、太陽光パネルも搭載されています。今後、南カリフォルニアの新工場で年間3,000台製造するとのことです。
▲カルマオートモーティブ社Revero(出典:カルマオートモーティブ社Webサイト)
なお、フィスカーオートモーティブを立ち上げたヘンリックフィスカー氏は新たに2016年、Fisker社を立ち上げ、EVの開発に乗り出しています。Fisker eMotionと名付けられた同車は航続距離640km、 最高速度259 km/hの仕様で開発が進められています。
▲フィスカー eMotion(出典:ヘンリックフィスカー氏Webサイト)
中国のEVベンチャー企業中国蔚来汽車(NextEV)はNIO EP9というEVを開発中であると伝えられています。既に同車は、ドイツ・ニュルブルクリンクの北コースにおけるラップタイムで、トヨタの「TMG EV P002」が2012年に記録した記録を上回ったとのことである。また、航続距離は426kmと、比較的実用に値するレベルです。
NextEV社は元欧州フォード社長のマーティン・リーチ氏が立ち上げ、BMWの元シニア・デザイナーやテスラ・モーターズの元シニア・プログラム・ディレクター、シスコシステムズの技術/戦略責任者なども雇い入れており、中国上海、米国カルフォルニア州サンノゼ、ドイツミュンヘン、イギリスロンドンを拠点として活動を行っていくようです。
▲NextEV NIO EP9(出典:NextEV社Webサイト)
テスラモーターズの名前の元となった「ニコラ・テスラ」氏の名前から上手く社名をとったニコラモーター。最初はどのような会社か訝しがられておりましたが、なんと、水素燃料電池(FC)で動くセミトレーラーを開発する発売すると昨年12月に発表しました。新たに発表されたNikola Oneは、72ヶ月のリースで、月額5000ドル(60万円程度)からとのことで、およそ160万km分の水素燃料代も含まれるとの事です。ニコラモーターによると米国とカナダ南部に水素ステーションの建設も予定しており、それら事業も手掛けるとのこと。果たしてビジネスモデルが成り立つかはわかりませんが、とても興味深い取り組みであることは間違いありません。
▲Nikola One(出典:ニコラモーター社Webサイト)
スウェーデンのEVベンチャー企業Unitiは、上記のEVベンチャー企業などとは一線を画す企業と言えそうです。というのもその資金調達手段がクラウドファンディングである点が最も異なっています。同社が昨年11月に実施したクラウドファンディングでは、目標50万ユーロ(約6,000万円)に対し、最終的に122万7,990ユーロ(約1億5,000万円)もの資金が集まりました。同社のウェブサイトによると、45カ国の18歳から85歳の570人が出資したとのことであり、1人当たり平均およそ26万円を出資した計算になります。
既に同社は140台の予約注文を受けており、2020年末の発売を計画しているとの事、スウェーデンの大学等からの支援も受けて開発を進めるそうです。同社が公開している映像などを見ても、とても楽しそうな雰囲気が良い感じです。
▲Uniti(出典:Uniti社ウェブサイト)
最後にご紹介するのは、米ミズーリ州カンザスシティを拠点とするベンチャー企業Verd2GOによるサービスです。同社は、家庭やオフィスビルなどで発生した余剰電力を同社が開発するバッテリーに貯め、指定のバッテリーステーションに持ち込むことで、別のユーザーに売電するというビジネスモデルを提案しています。その一環としてバッテリー交換式EVおよびスマート充電システムも提案しています。
バッテリー交換式EVと言えば多くの構想があったもののなかなか上手くいきませんでした。例えば、2013年に破綻したベタープレイスは一例として有名です。Verd2GOのサービスは電池に貯めた電力が経済性を持つ場合に成り立つ仕組みと言え、充電密度やバッテリーステーションの整備なども同時に必要であることから、今のところどのように進むか不透明なところもありそうです。とは言え、バッテリー交換式EVの可能性を探ると言う意味で、是非、頑張ってほしいものです。
▲Verd2GO Energy(出典:Verd2GO社ウェブサイト)
以上、本日のコラムでは世界9社のEV・PHEV・FCVベンチャー企業の動向をご紹介しました。既に販売までこぎつけた会社、まだまだ構想段階の会社など様々ですが、いずれの企業についても今後の動向が楽しみです。
また、比較的活発な市場が中国および米国となり、それに伴い、中国企業や米国企業が非常に積極的に投資ならびに開発を行っています。是非、日本からもどんどん新しいEVベンチャー企業が生まれてくることを期待したいと思います。
●参考ウェブサイト:
-中国のインターネットサービス大手LeEco(楽視)、動画配信で業界最大手のNetflixとの協業(THE BRIDGE)
-中国のネットサービス大手が運営する電気自動車開発会社Le Supercar(楽視超級汽車)が10.8億ドルを調達、Teslaに対抗(THE BRIDGE)
-楽視汽車、米EVベンチャーと戦略提携(アジア経済ニュース)
-中国のインターネット大手LeEco(楽視)、約3,000億円を投じ自動運転EVの工場を伴ったテーマパーク建設を発表(THE BRIDG)
-EVメーカー「ファラデー」の未来に暗雲 CEOが給料15円で出直し宣言(フォーブスジャパン)
-Tesla Owners, Will Lucid Make Your Next Electric Car?(CAR and Driver)
-【レポート】元欧州フォード社長のマーティン・リーチ氏、中国の高級EVメーカー起業に参画
-ニコラ・モーター、水素燃料電池で駆動する新型セミトラック「ニコラ・ワン」を発表!(Autoblog)
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